膣トレ(骨盤底筋トレーニング)のやり方と、研究でわかっている効果

この記事でわかること
- 骨盤底筋の場所の見つけ方と、基本のメニュー
- 変化を感じるまでには3か月ほどかかるとされていること
- 痛みや「下がってくる感じ」があるときは、自己流で続けないほうがいいこと
目次
膣トレ(腟トレーニング)は、骨盤の底で膀胱・子宮・直腸を支える「骨盤底筋」を、自分の意思で締めて・ゆるめる練習です。英国の公的医療機関の資料では「ゆっくり締めて数秒保つ」「素早く締めてすぐゆるめる」を各10回まで、1日3回以上が基本とされ、変化を感じるまでには3か月ほどかかるとされています。Cochraneのレビューでは、腹圧性尿失禁(せき・くしゃみでの尿もれ)の女性で、トレーニングをした群は治った・軽くなったと答えた割合が高かったと報告されています。痛み・下がってくる感じ・産後の不調がある場合は、自己流で続けずに専門家に相談してください。
骨盤底筋は、骨盤の底にある「筋肉のハンモック」
骨盤底筋は、前は恥骨、後ろは尾骨のあいだに張った筋肉の集まりで、よく「ハンモック」にたとえられます。尿道・腟・肛門の3つの出口がここを通っていて、主に次のような役割があります。
- 膀胱・子宮・直腸を下から支える
- せき・くしゃみ・ジャンプなどでおなかに圧がかかった瞬間に、尿道や肛門を閉じる
- 排尿・排便のときにゆるんで、出口を開ける
妊娠・出産、加齢、閉経にともなうホルモンの変化、慢性的な便秘やせきなどで、この筋肉がうまく働きにくくなることがあります。その結果として起こりやすいのが、腹圧性尿失禁や、腟から何かが下がってくるように感じる骨盤臓器脱です。
尿もれのある女性は少なくありません
日本の20〜79歳の女性4,804人を対象にしたインターネット調査では、腹圧性尿失禁(混合型を含む)がある人は16.7%と報告されています(純粋な腹圧性が13.0%、切迫性との混合型が3.7%)[1]。およそ6人に1人の割合です。「恥ずかしくて人に言えない」と感じやすい悩みですが、珍しいことではありません。
膣トレは骨盤底筋トレーニングの別名
「膣トレ」「腟トレーニング」は、骨盤底筋トレーニング(Pelvic Floor Muscle Training、PFMT)の呼び方の一つです。考案者の名前から「ケーゲル体操」とも呼ばれます。特別な道具がなくても、座ったまま・寝たままで、ほかの人に気づかれずにできるのが特徴です。
英国の国立医療技術評価機構(NICE)は、腹圧性尿失禁または混合性尿失禁の女性に対して、専門家の指導つきの骨盤底筋トレーニングを少なくとも3か月、最初の治療として行うことを品質基準に挙げています[2]。日本でも、日本排尿機能学会・日本泌尿器科学会の「女性下部尿路症状診療ガイドライン[第2版]」(2019年)で、骨盤底筋訓練が治療の項目として取り上げられています[3]。

まず「正しく締める」感覚を見つける
膣トレでいちばん大事なのは、回数よりも正しい筋肉を動かせているかです。米国で行われた古い研究では、口頭で説明を受けただけの女性47人のうち、理想的に締められていたのは49%で、25%はかえって尿もれを起こしやすい力の入れ方(いきむ動き)をしていたと報告されています[4]。
見つけ方
- いすに浅めに座り、両足を床につけ、ひざを軽く開きます。
- 「おならと尿を同時にがまんする」つもりで、肛門と腟・尿道のまわりをきゅっと締め、体の内側へ引き上げるようにします[5][6]。
- 締めたあと、力を抜いて元に戻る感覚も確かめます。
英国の資料では、確認方法として、清潔な指(親指)を腟に浅く入れ、締めたときに指のまわりがしまる感覚があるかを確かめる方法が紹介されています[6]。抵抗がある場合は無理に行う必要はありません。
よくある間違い
- 息を止める:呼吸は止めず、ふつうに続けます[5]。
- お尻や太ももに力が入る:お尻・脚は動かさず、ゆるめたままにします[5][6]。
- おなかに力を入れて押し下げる(いきむ):締める動きは「下へ押す」ではなく「上へ引き上げる」です[4][6]。
- ゆるめ切らないまま次を締める:1回ごとにしっかり力を抜きます[5]。
- トイレで尿を止めて練習する:排尿を途中で止めたり出したりする練習は、膀胱の正常な働きを乱すおそれがあるため、すすめられていません[5]。
膣トレの基本メニュー
以下は、英国の公的医療機関(NHS)の患者向け資料[5][6]をもとにした一般的な手順です。人によって適切な強さや回数は異なるため、目安として読んでください。
① ゆっくり締める(持久力)
- 締めて引き上げ、そのまま保ちます。
- 最初は2〜3秒しか保てなくても大丈夫です。慣れてきたら最大6〜10秒を目指します[5][6]。
- 力を抜いて3〜4秒休みます[6]。
- これを最大10回くり返します。
② 素早く締める(瞬発力)
- すばやく締めて、すぐに力を抜きます。
- 最大10回くり返します[5][6]。
- 1回ごとにしっかりゆるめます。
素早い収縮は、せきやくしゃみの瞬間に筋肉がすぐ反応できるようにするための練習とされています[6]。
③ 回数と頻度
- ①と②を1セットとして、1日3回以上、できれば毎日行います[6]。
- 最初は「ゆっくり5回+素早く5回」から始め、少しずつ10回ずつまで増やす方法もあります[5]。
- 疲れるほどやる必要はありません。筋肉が疲れると正しく締められなくなります[5]。
- NICEのガイダンスを紹介した資料では「1日3回、1回につき少なくとも8回の収縮」という目安も示されています[7]。
④ 姿勢
- 慣れないうちは、座った姿勢やあお向けでひざを立てた姿勢など、力を感じやすい姿勢で行います。
- 正しくできるようになったら、立った姿勢や家事の合間など、どんな姿勢でも行えるとされています[6]。
⑤ 続けるコツ
- 歯みがきのあと、通勤電車、授乳中など「いつもやること」に結びつける
- スマホのリマインダーやアプリで回数を記録する
- 筋力が戻ったあとも、維持のために1日1セット程度は続ける[5]
変化を感じるまで、どれくらいかかる?
英国の資料では、定期的に約3か月続けると変化が出始め、3〜5か月かかることもあるとされています[6]。NICEが「少なくとも3か月」を一区切りにしているのも同じ考え方です[2]。数日〜数週間で変化がなくても、やり方が間違っているとは限りません。ただし、数か月続けても変わらない、そもそも締める感覚がわからない場合は、専門家に確認してもらうことをおすすめします。

研究でわかっていること
尿もれ(尿失禁)
国際的な研究評価機関であるCochraneのレビュー(Dumoulinら、2018年)は、31件のランダム化比較試験(女性1,817人)をまとめ、骨盤底筋トレーニングを行った群と、治療をしない・効果のない対照群を比べています[8][9]。
- 腹圧性尿失禁の女性では、「治った」と答えた割合がトレーニング群56%、対照群6%と報告されています(4試験、165人)[9]。
- 腹圧性尿失禁で「治った、または軽くなった」と答えた割合は、74%対11%でした(3試験、242人)[9]。
- 1日あたりの尿もれ回数は、腹圧性尿失禁で約1.2回少なかったと報告されています[9]。
一方で、エビデンスの質は「中程度」とされ、多くの試験はトレーニング内容の詳細が不十分で、追跡期間も1年未満が中心です。切迫性・混合性尿失禁については、まだ確かなことは言いにくいとされています[9]。
妊娠中・産後
妊娠・出産期を対象にしたCochraneレビュー(Woodleyら、2020年、46試験・10,832人)を紹介した記事によると、尿もれのない妊婦が妊娠初期から計画的にトレーニングを行うと、妊娠後期に尿もれを報告する人が少なかったとされています[10]。一方、すでに尿もれがある人が妊娠中・産後に行った場合は、はっきりした差は示されていません[10]。
骨盤臓器脱
NICEは、腟の入り口から大きく出ていない程度の症状のある骨盤臓器脱に対して、指導つきの骨盤底筋トレーニングを少なくとも4か月行うことを検討するよう勧めています[7]。自己判断ではなく、診断を受けたうえで行うことが前提です。
性生活への影響
骨盤底筋トレーニングと女性の性機能を調べた系統的レビュー(米国産婦人科学雑誌、2024年)では、21件のランダム化比較試験が集められ、そのうち4件をまとめた解析で、性的興奮・オーガズム・満足度・痛みのスコアが対照群より良好だったと報告されています[11]。
ただし、このレビュー自体がエビデンスの確実性は「非常に低い」〜「低い」と評価しており、試験ごとの方法や結果のばらつきも大きいとしています[11]。現時点では「改善の可能性が報告されている段階」であり、膣トレで性生活が必ず変わるとは言えません。性交痛がある場合は、むしろ筋肉が緊張しすぎていることもあるため、次の章を参考にしてください。
自己流で続けないほうがいい人
骨盤底筋トレーニングは副作用の少ない方法とされていますが[10]、次のような場合は、始める前や続ける前に婦人科・泌尿器科、または骨盤底を専門とする理学療法士に相談してください。
- トレーニング中や性交時に痛みがある:骨盤底筋が緊張しすぎている場合、締める練習より「ゆるめる」練習が必要なことがあります。NICEの定義でも、骨盤底筋トレーニングには筋力・持久力だけでなく「リラックス(弛緩)」の改善が含まれています[2]。
- 腟から何かが出てくる・下がってくる感じがある:英国の資料では、運動中に腟のふくらみ(bulge)を見たり感じたりしたら中止して専門家に相談するよう書かれています[5]。骨盤臓器脱の可能性があります。
- 産後まもない、帝王切開や会陰の傷がある:回復の状態は人によって大きく異なります。産後健診などで相談しましょう。
- 締める感覚がまったくわからない:NICEは、正しく締められない人に対してバイオフィードバックや電気刺激を加えることを検討するとしています[7]。
すぐに受診したほうがよい症状
- 血尿、排尿時の強い痛み、発熱をともなう排尿の不調
- 尿が出にくい・残っている感じが続く
- 急に尿もれが増えた、日常生活に支障がある
- 不正出血、強い下腹部痛
何科へ? 尿もれが中心なら泌尿器科(女性泌尿器科・ウロギネコロジー外来)、下がってくる感じや性交痛、産後の不調は婦人科が相談先になります。
セルフケア・機器・医療機関の違い
| 選択肢 | 内容 | 向いている人 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| セルフケア(自分で膣トレ) | この記事のメニューを毎日続ける | 軽い尿もれ、予防したい人 | 正しく締められているか自分では確かめにくい |
| バイオフィードバック機器・アプリ | センサーで締める力を見える化し、練習を記録する | 締める感覚をつかみたい、続ける仕組みがほしい人 | 腟内に入れるタイプは衛生管理が必要。研究での上乗せ効果は限定的 |
| EMS(電気刺激)機器 | 電気で筋肉の収縮を促す | 自分で締めるのが難しい人の補助として | 医療機関での電気刺激の研究と、家庭用機器は別物。妊娠中・体内に医療機器がある人は使用前に確認を |
| 医療機関(泌尿器科・婦人科・理学療法) | 診察、指導つきトレーニング、薬、手術など | 症状が強い・続く、痛みや下がる感じがある人 | 受診の手間はあるが、原因を確かめられる |
バイオフィードバック
バイオフィードバックは、締めた力をグラフや数値で見せて練習を助ける方法です。Cochraneのレビュー(CD009252)では、骨盤底筋トレーニングにバイオフィードバックを加えても、尿失禁に関する生活の質はほとんど変わらず、尿もれ回数の減少もわずかで実感しにくい程度とされています。一方、治療への満足度は高くなる可能性がある(確実性は低い)とされています[12]。「より強力な方法」というより、正しく締められているかの確認や、続けるモチベーションの道具として考えるとよいでしょう。
EMS(電気刺激)
Cochraneのレビュー(Stewartら、2017年、56試験・3,781人)では、体内に埋め込まない電気刺激は、何もしない・偽の刺激と比べて腹圧性尿失禁が治った・軽くなったと答える割合が高い可能性がある一方、骨盤底筋トレーニングと比べてどちらがよいかは、エビデンスが不十分と結論づけています[13]。ここでの研究は医療機関などで行われた電気刺激で、家庭用の美容機器がそのまま同じ結果になるとは限りません。
家庭用のEMS機器には、座ったまま使えるタイプもあります。自分で締める練習が続かない人の補助として、検討する選択肢の一つです。
※機器は医師の診断や治療の代わりにはなりません。症状が続く場合や強い場合は、医療機関を受診してください。
よくある質問
Q1. 膣トレは1日何回、どのくらいやればいいですか?
英国の資料では、ゆっくり締める(数秒保つ)・素早く締めるをそれぞれ最大10回、1日3回以上が目安とされています[5][6]。変化を感じるまでには約3か月、人によっては3〜5か月かかるとされています[6]。
Q2. 膣トレで腟のゆるみや感覚は変わりますか?
骨盤底筋を意識して動かせるようになると感じ方が変わる人はいますが、腟の感覚や性機能への効果は研究がまだ少なく、エビデンスの確実性は低いと評価されています[11]。感じ方には個人差があり、必ず変化があるとは言えません。
Q3. 尿を途中で止める練習をしてもいいですか?
すすめられていません。排尿を途中で止めたり出したりすると、膀胱の正常な働きを乱すおそれがあるとされています[5]。筋肉の場所を確かめる目的でも、トイレ以外の時間に練習しましょう。
Q4. 産後いつから始められますか?
産後の体の状態は、分娩の方法や傷の回復具合によって大きく異なります。痛みや出血がある場合は無理をせず、産後健診や婦人科で相談してから始めてください。
Q5. やっていて痛みが出たら?
いったん中止して、婦人科や骨盤底を専門とする理学療法士に相談してください。筋肉が緊張しすぎている場合は、締める練習より「ゆるめる」練習が必要なことがあります[2]。
参考文献
参考にした論文・資料(13件)
- Ninomiya S, Naito K, Nakanishi K, Okayama H. Prevalence and Risk Factors of Urinary Incontinence and Overactive Bladder in Japanese Women. Lower Urinary Tract Symptoms. 2017.(UroToday抄録)https://www.urotoday.com/recent-abstracts/pelvic-health-reconstruction/overactive-bladder/97738-prevalence-and-risk-factors-of-urinary-incontinence-and-overactive-bladder-in-japanese-women.html
- NICE. Urinary incontinence in women (QS77). Quality statement 4: Supervised pelvic floor muscle training. https://www.nice.org.uk/guidance/QS77/chapter/quality-statement-4-supervised-pelvic-floor-muscle-training
- 日本排尿機能学会・日本泌尿器科学会編.女性下部尿路症状診療ガイドライン[第2版].2019.(Mindsガイドラインライブラリ)https://minds.jcqhc.or.jp/summary/c00544/
- Bump RC, Hurt WG, Fantl JA, Wyman JF. Assessment of Kegel pelvic muscle exercise performance after brief verbal instruction. Am J Obstet Gynecol. 1991;165(2):322-329. https://experts.umn.edu/en/publications/assessment-of-kegel-pelvic-muscle-exercise-performance-after-brie/
- Milton Keynes University Hospital NHS Foundation Trust. Pelvic floor exercises and advice for women. https://www.mkuh.nhs.uk/?p=22098
- Berkshire Healthcare NHS Foundation Trust. Pelvic floor exercises for women (2025 update). https://www.berkshirehealthcare.nhs.uk/media/110205590/pelvic-floor-exercises-women-2025-update.pdf
- GPnotebook. NICE guidance – pelvic floor muscle training – if pelvic floor dysfunction(NICE NG123の要約). https://gpnotebook.com/en-GB/pages/gynaecology/nice-guidance-pelvic-floor-muscle-training-if-pelvic-floor-dysfunction
- Dumoulin C, Cacciari LP, Hay-Smith EJC. Pelvic floor muscle training versus no treatment, or inactive control treatments, for urinary incontinence in women. Cochrane Database Syst Rev. 2018;CD005654.pub4. https://cochranelibrary.com/es/cdsr/doi/10.1002/14651858.CD005654.pub4/information/ja
- NIHR Evidence. Pelvic floor muscle training can improve symptoms of urinary incontinence(Dumoulin 2018の解説). https://evidence.nihr.ac.uk/alert/pelvic-floor-muscle-training-can-improve-symptoms-of-urinary-incontinence/
- American Family Physician. Pelvic Floor Muscle Training to Prevent and Treat Urinary and Fecal Incontinence in Antenatal and Postnatal Patients(Woodley SJ et al. Cochrane 2020;CD007471の解説). 2021. https://www.aafp.org/afp/2021/0900/p234
- Pelvic floor muscle training as treatment for female sexual dysfunction: a systematic review and meta-analysis. Am J Obstet Gynecol. 2024;231(1):51-66.e1. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38191016/
- Cochrane. Feedback or biofeedback to augment pelvic floor muscle training for urinary incontinence in women (CD009252), plain language summary. https://www.cochrane.org/evidence/CD009252_exercise-pelvic-floor-muscles-more-effective-treating-unintentional-passing-urine-incontinence-women
- Stewart F, Berghmans B, Bø K, Glazener CMA. Electrical stimulation with non-implanted devices for stress urinary incontinence in women. Cochrane Database Syst Rev. 2017;CD012390. https://www.cochrane.org/ru/evidence/CD012390_non-invasive-electrical-stimulation-stress-urinary-incontinence-women
この記事は一般的な医療情報の提供を目的としており、診断や治療に代わるものではありません。症状が続く場合や強い場合は、医療機関を受診してください。
内容の最終確認:2026.10.19。誤りに気づいたらお問い合わせからお知らせください。

