女性の尿漏れ(腹圧性・切迫性)の原因と、自分でできる対処・受診の目安

この記事でわかること
- 咳やくしゃみで漏れる「腹圧性」と、急にトイレに行きたくなる「切迫性」の違い
- 骨盤底筋トレーニングや膀胱訓練など、自分でできること
- 泌尿器科と婦人科、どちらに行けばいいかの目安
女性の尿漏れ(尿失禁)は、咳・くしゃみ・重い物を持ったときに漏れる「腹圧性」、急に強い尿意が来て間に合わない「切迫性」、その両方がある「混合性」が中心です。出産、加齢・閉経、肥満、便秘などが関係し、日本の20〜79歳の女性を対象にした調査では約6人に1人に腹圧性の尿漏れがあると報告されています。研究では骨盤底筋トレーニングが最初に試す方法として位置づけられており、切迫性には膀胱訓練も用いられます。症状が続く、生活に支障がある場合は泌尿器科や婦人科(ウロギネコロジー外来)に相談できます。
尿漏れはどのくらい多い?
尿失禁とは、自分の意思とは関係なく尿が漏れてしまう状態のことです。量が少なくても、下着が濡れる、においが気になる、外出や運動を控えるといった形で生活に影響することがあります。
尿漏れは珍しいことではありません。
- 日本の20〜79歳の女性4,804人を対象にしたインターネット調査では、腹圧性尿失禁(混合性を含む)は16.7%、過活動膀胱は8.1%と報告されています(Ninomiyaら, 2017)。
- 日本排尿機能学会が2023年に行った全国調査(成人女性3,088人を分析)では、頻尿や尿もれなど蓄尿症状が中等度のグループが約40%を占めた一方、最も症状が重いグループでも医療機関を受診していたのは11.8%にとどまったと報告されています。
つまり、多くの女性が尿漏れを抱えながら、誰にも相談していないのが実情です。恥ずかしいと感じるのは自然なことですが、医療の場ではよくある相談の一つとして扱われています。
尿漏れの3つのタイプ
| タイプ | どんなときに漏れるか | 主なしくみ |
|---|---|---|
| 腹圧性尿失禁 | 咳、くしゃみ、笑ったとき、ジャンプ、重い物を持ったとき | お腹に力がかかったとき、尿道を締めて支える力(骨盤底筋・尿道括約筋)が追いつかない |
| 切迫性尿失禁 | 急に強い尿意が来て、トイレまで間に合わない。水の音や帰宅時の玄関で起きやすい | 膀胱が意図せず縮んでしまう(過活動膀胱)ことが多い |
| 混合性尿失禁 | 上の両方がある | 腹圧性と切迫性の要因が重なる。閉経後に多いとされる |
ほかに、尿がうまく出し切れずにあふれ出る「溢流性(いつりゅうせい)尿失禁」もあります。婦人科・大腸の手術後や糖尿病による神経の障害などが原因になることがあり、自己判断が難しいため受診が勧められます。
「咳・くしゃみで漏れる」は腹圧性のサイン
咳 尿漏れ、くしゃみ 尿漏れ で検索される方の多くは、腹圧性尿失禁にあてはまります。花粉症や風邪で咳・くしゃみが続く時期に気づく方も少なくありません。

尿漏れの原因
1. 妊娠・出産(産後の尿漏れ)
妊娠中は子宮の重みが骨盤底にかかり、経腟分娩では骨盤底筋や尿道を支える組織が引き伸ばされます。日本の調査でも、出産経験は腹圧性尿失禁の危険因子として報告されています(Ninomiyaら, 2017)。産後しばらく尿漏れが続くことはよくありますが、長く続く場合は相談の対象です。
2. 加齢・閉経
年齢とともに筋肉量は減り、骨盤底筋も例外ではありません。また閉経後は女性ホルモン(エストロゲン)が減ることで、尿道や腟の粘膜・組織が変化し、尿道を閉じる力が弱まりやすいとされています。先の調査では、40歳以上が腹圧性尿失禁・過活動膀胱の共通の危険因子でした。
3. 肥満
体重が増えると、お腹の中の圧力が常に骨盤底にかかりやすくなります。調査ではBMI 25以上が危険因子として挙げられています。英国NICEのガイドラインでは、BMIが30を超える尿失禁の女性に減量を勧めています。
4. 便秘
排便時に強くいきむことを繰り返すと、骨盤底に負担がかかります。日本の調査では、便秘も腹圧性尿失禁・過活動膀胱の共通の危険因子でした。
そのほか
慢性的な咳(喫煙、ぜんそくなど)、重い物を持つ仕事、骨盤臓器脱(子宮や膀胱が下がってくる状態)、脳卒中やパーキンソン病などの神経の病気も関係することがあります。
自分でできること
ここで紹介するのは、研究やガイドラインで報告されている方法です。効果には個人差があり、すべての人に当てはまるわけではありません。一つの選択肢として参考にしてください。
骨盤底筋トレーニング
骨盤底筋は、骨盤の底でハンモックのように膀胱・子宮・直腸を支え、尿道や肛門を締める筋肉です。
研究で報告されていること
- コクラン・レビュー(Dumoulinら, 2018)は、31件のランダム化比較試験(女性1,817人)をまとめ、骨盤底筋トレーニングと「治療なし・効果のない対照」を比べています。
- 腹圧性尿失禁の女性では、「治癒した」と答えた人がトレーニング群で56%、対照群で6%、「治癒または改善」は74%対11%と報告されています(いずれも少数の試験のデータ)。
- 切迫性・混合性については試験が少なく、根拠は限られているとされています。
- 著者らは、骨盤底筋トレーニングを女性の尿失禁に対する保存的治療の第一選択に位置づけうるとしています。副作用はまれで軽微とされています。
英国NICEのガイドラインでも、腹圧性・混合性尿失禁の最初の治療として、指導のもとで少なくとも3か月の骨盤底筋トレーニングを勧めており、目安として1回8回以上の収縮を1日3回としています。日本の「女性下部尿路症状診療ガイドライン[第2版]」(日本排尿機能学会・日本泌尿器科学会)でも、行動療法として骨盤底筋訓練と膀胱訓練が取り上げられています。
やり方の基本
- 仰向けで膝を立てる、または椅子に浅く座る。お腹・お尻・太ももの力は抜く。
- 尿や便、おならを我慢するように、腟と肛門のまわりを「締めて、体の中へ引き上げる」。
- 数秒キープして、ゆっくり力を抜く。抜く時間も同じくらいとる。
- 呼吸は止めない。慣れたら素早く締めて緩める動きも加える。
正しい筋肉を使えているか自分ではわかりにくく、お腹やお尻に力が入ってしまう方も多いです。うまくいかない場合は、医療機関で理学療法士や看護師の指導を受けられることもあります。
産後の方へ: コクラン・レビュー(Woodleyら, 2020)では、尿漏れのない妊婦さんが妊娠中にトレーニングを行うと、産後3〜6か月ごろの尿漏れが少し減ると報告されています。一方、産後すでにある尿漏れへの効果ははっきりしないとされています。産後の尿漏れが続く場合は、自己流で続けるより、健診時などに相談するのがおすすめです。
膀胱訓練(切迫性・混合性向け)
急な尿意に振り回されるタイプでは、「尿意を感じてもすぐトイレに行かず、少しずつ我慢する時間を延ばす」膀胱訓練が用いられます。NICEは切迫性・混合性尿失禁の最初の治療として、少なくとも6週間の膀胱訓練を勧めています。
- まず3日間ほど「排尿日誌」(トイレに行った時刻、量の目安、漏れた時刻)をつけると、自分のパターンがわかり、受診時にも役立ちます。
- 尿意が来たら、立ち止まって骨盤底筋を締め、気持ちを落ち着かせてからトイレへ向かう。
- 間隔は数分ずつ、無理のない範囲で延ばす。
生活習慣で見直せること
- 体重: BMIが高めの場合、減量が勧められています。
- カフェイン: 過活動膀胱では、カフェインを減らしてみることが勧められています(NICE)。
- 水分: 漏れるのが心配で水分を極端に減らすと、尿が濃くなり膀胱を刺激することもあります。多すぎ・少なすぎを避けて適量に。
- 便秘対策: 食物繊維・水分・運動で、強くいきまずに排便できるように。
- 禁煙: 慢性的な咳を減らすことにもつながります。
何科に行けばいい?
何科?
- 泌尿器科:尿漏れ・頻尿の専門。女性医師がいる、または「女性泌尿器科」を掲げるクリニックもあります。
- 婦人科:産後や閉経前後の不調、子宮が下がる感じがある場合にも相談しやすい科です。
- ウロギネコロジー(女性泌尿器科・ウロギネ外来):泌尿器科と婦人科の両方の視点で、尿漏れや骨盤臓器脱を診る専門外来です。
こんなときは相談を
- セルフケアを2〜3か月続けても変わらない、または悪くなっている
- 尿漏れのせいで外出・運動・仕事・睡眠に支障がある
- 腟から何かが出てくる感じ、股に何か挟まっている感じがある(骨盤臓器脱の可能性)
- 尿が出にくい、出し切れていない感じがある、いつもちょろちょろ漏れている
- 便漏れもある
- 過去に骨盤の手術や放射線治療を受けたことがある
早めに受診したほうがよいサイン
- 血尿、排尿時の強い痛み、発熱をともなう
- 膀胱や尿道の痛みが続く
- 急に始まった尿漏れで、足のしびれ・力が入りにくいなど神経の症状がある
受診時には、いつから・どんなときに漏れるか、1日の回数、排尿日誌があればそれを持参すると話がスムーズです。

選択肢の比較
| 選択肢 | 内容 | 向いている人・注意点 |
|---|---|---|
| セルフケア | 骨盤底筋トレーニング、膀胱訓練、減量、便秘・カフェインの見直し | 費用がかからず、研究でも最初に試す方法とされる。正しくできているか分かりにくい、続けにくいのが課題 |
| 尿漏れパッド・吸水ショーツ | 漏れた尿を吸収して、外出や運動の不安を減らす | 症状そのものに働きかけるものではないが、生活の質を保つ手段として有用。少量用〜多量用まであり、生理用ナプキンより尿の吸収・におい対策に向く |
| 骨盤底筋ケア機器 | 座って使うタイプなど、骨盤底筋に働きかける家庭用機器 | セルフケアの補助として検討する人向け。効果の感じ方には個人差がある。医療機関での治療の代わりではないため、症状が続く・強い場合は受診を |
| 医療機関:薬 | 切迫性・過活動膀胱には抗コリン薬やβ3作動薬、腹圧性にはβ2作動薬が使われることがある。難治性の過活動膀胱には膀胱へのボツリヌス毒素注射(2020年から保険適用)も | 医師の診察のうえで処方。口の渇き・便秘などの副作用や、ほかの持病・薬との兼ね合いを相談して選ぶ |
| 医療機関:手術 | 腹圧性尿失禁には、尿道の下にテープを通して支える手術(TVT・TOTなど) | セルフケアで十分でない腹圧性の方の選択肢。メリット・リスクを医師と相談して決める |
どの方法が合うかは、尿漏れのタイプや程度、ライフステージによって異なります。まずセルフケアやパッドで様子を見て、変化がなければ受診する、という順番でも問題ありません。
よくある質問
Q1. 尿漏れは何歳くらいから起こりますか?
年齢に関係なく起こります。20代でも出産後や激しい運動時に経験する方がいます。日本の調査では40歳以上で起こりやすいと報告されており、閉経前後で気づく方も多いです。
Q2. 尿漏れは自然に治りますか?
産後の尿漏れのように、時間とともに軽くなる場合もあります。ただし、続く場合や悪くなる場合もあるため、数か月たっても変わらないときは医療機関に相談してください。
Q3. 骨盤底筋トレーニングはどのくらいで効果が出ますか?
英国のガイドラインでは、少なくとも3か月続けることが目安とされています。効果の感じ方には個人差があり、全員に効くわけではありません。
Q4. 漏れるのが怖いので、水分を控えてもいいですか?
極端に控えるのはおすすめされません。尿が濃くなって膀胱が刺激されたり、便秘や脱水につながったりすることがあります。夜間の頻尿が気になる場合は、寝る前の量を調整するなど、適量を意識しましょう。
Q5. 泌尿器科と婦人科、どちらに行けばいいですか?
尿漏れが主な悩みなら泌尿器科、産後や閉経前後の不調、子宮が下がる感じもある場合は婦人科が相談しやすいでしょう。両方を診るウロギネコロジー外来もあります。どちらに行っても、必要なら適切な科を紹介してもらえます。
参考文献
参考にした論文・資料(9件)
- Dumoulin C, Cacciari LP, Hay-Smith EJC. Pelvic floor muscle training versus no treatment, or inactive control treatments, for urinary incontinence in women. Cochrane Database Syst Rev. 2018;(10):CD005654. https://cochranelibrary.com/es/cdsr/doi/10.1002/14651858.CD005654.pub4/information/ja
- NIHR Evidence. Pelvic floor muscle training can improve symptoms of urinary incontinence(上記レビューの要約). https://evidence.nihr.ac.uk/alert/pelvic-floor-muscle-training-can-improve-symptoms-of-urinary-incontinence/
- Cochrane. Featured Review: Pelvic floor muscle training versus no treatment or inactive control treatments(日本語). https://www.cochrane.org/ja/about-us/news/featured-review-pelvic-floor-muscle-training-versus-no-treatment-or-inactive-control-treatmen-0
- Woodley SJ, et al. Pelvic floor muscle training for preventing and treating urinary and faecal incontinence in antenatal and postnatal women. Cochrane Database Syst Rev. 2020;CD007471. https://www.cochrane.org/evidence/CD007471_pelvic-floor-muscle-training-preventing-and-treating-urinary-and-faecal-incontinence-antenatal
- Ninomiya S, Naito K, Nakanishi K, Okayama H. Prevalence and Risk Factors of Urinary Incontinence and Overactive Bladder in Japanese Women. Low Urin Tract Symptoms. 2017(UroToday抄録). https://www.urotoday.com/recent-abstracts/pelvic-health-reconstruction/overactive-bladder/97738-prevalence-and-risk-factors-of-urinary-incontinence-and-overactive-bladder-in-japanese-women.html
- 日本排尿機能学会 疫学調査(2023年実施)に基づく成人女性の排尿症状の分類と受診率(プレスリリース, 2025). https://zaikei.co.jp/releases/3074765/
- NICE guideline NG123. Urinary incontinence and pelvic organ prolapse in women: management. https://www.nice.org.uk/guidance/ng123/chapter/Recommendations
- Minds ガイドラインライブラリ. 女性下部尿路症状診療ガイドライン[第2版](日本排尿機能学会・日本泌尿器科学会 編, 2019). https://minds.jcqhc.or.jp/summary/c00544/
- メディカルノート. 女性の尿失禁のタイプと治療(腹圧性・切迫性・混合性、薬物療法・手術). https://medicalnote.jp/contents/230105-001-SB
※この記事は一般的な医療情報の提供を目的としたもので、診断や治療に代わるものではありません。気になる症状がある場合は医療機関にご相談ください。
内容の最終確認:2026.10.19。誤りに気づいたらお問い合わせからお知らせください。
