フェムコア研究所

性の悩み

性交痛(セックスが痛い)の原因と対処、受診の目安

フェムコア研究所 編集部公開 2026.10.19約12分で読めます

ソファでコーヒーを飲みながら話すカップル
Photo: Vitaly Gariev / Unsplash

この記事でわかること

  • 性生活のある女性の約13人に1人が経験すると報告されていること
  • 入口が痛いか、奥が痛いかで考えられる原因が変わること
  • 出血・発熱・強い痛みがあるときは、早めに婦人科へ
目次
  1. 性交痛はどのくらい多い?
  2. 痛む場所で原因を考える
  3. 自分でできること
  4. パートナーとの話し方
  5. 何科に、どんなときに行く?
  6. 選択肢の比較
  7. よくある質問
  8. 参考文献

性交痛(医学的には「性交疼痛症」「性器-骨盤痛・挿入障害」とも呼ばれます)は、英国の約6,700人の性生活のある女性を対象にした調査で 7.5%(約13人に1人) が経験していると報告された、珍しくない症状です。原因は「入口が痛いか」「奥が痛いか」で大きく分かれ、入口なら腟の乾燥・腟けいれん・カンジダなどの炎症、奥なら子宮内膜症や骨盤内の炎症が代表的です。潤滑剤や時間をかけることで和らぐ場合もありますが、出血・発熱・強い痛みがあるとき、痛みが続くときは婦人科で相談してください。


性交痛はどのくらい多い?

性交痛とは、腟への挿入時や性交中、性交後に外陰部・腟・下腹部に痛みを感じる状態です。焼けるような痛み、刺すような痛み、締めつけられるような痛みなど、感じ方は人によって異なります。

英国の全国調査(Natsal-3、16〜74歳)を分析した研究では、過去1年に性生活のあった女性の 7.5% が性交痛を経験しており、そのうち約4分の1は「6か月以上、とても頻繁または毎回痛みがあり、つらいと感じている」と報告されています[1]。年代別では 16〜24歳と55〜64歳 で多い傾向がみられました[2]。

同じ研究では、性交痛と強く関連していた要因として 腟の乾燥、性行為への不安、性行為を楽しめないこと が挙げられています[1]。つまり性交痛は体の問題と気持ちの問題が重なって起こることが多く、「我慢が足りない」「自分の体がおかしい」というものではありません。


痛む場所で原因を考える

医療機関でも、まず「痛む場所」と「どのタイミングで痛むか」を確認します。MSDマニュアルでは、性交痛の原因を 外陰部・腟の入口の痛み(表在性) と 骨盤内の深い痛み(深部) に分けています[3][4]。

入口が痛い(挿入時の痛み)

1. 腟の乾燥・潤滑不足性的な興奮が十分でないまま挿入すると、腟の潤いが足りず摩擦で痛みが出ます。エストロゲン(女性ホルモン)が少ない時期、たとえば 授乳中・産後・閉経前後 にも乾燥しやすくなります。一部の薬(抗うつ薬、降圧薬、抗ヒスタミン薬、ホルモン剤など)が影響することもあると説明されています[5]。

2. 腟けいれん(腟痙)・骨盤底筋の緊張腟の入口周りの筋肉が、本人の意思とは関係なく収縮してしまう状態です。挿入を予期すると不安が強まり、骨盤底筋がこわばって痛みが増し、さらに不安になる…という悪循環が起こりやすいとされています[4]。近年は「性器-骨盤痛・挿入障害」という診断名にまとめられています[3]。

3. 外陰部・腟の炎症(カンジダなど)カンジダ腟炎 では、外陰部や腟のかゆみ・ヒリヒリ感、白いカッテージチーズ状のおりものに加えて、性交痛が出ることがあります。抗菌薬の服用後、妊娠中、糖尿病、通気性の悪い下着などが誘因として挙げられています[6]。そのほか、細菌性腟症、性器ヘルペス、皮膚の病気(硬化性苔癬など)、腟の入口に触れると痛む 誘発性腟前庭痛 も入口の痛みの原因になります[3]。

4. 出産・手術後の傷あと会陰切開や裂傷のあと、骨盤の手術後に、傷あとが引きつれて痛むことがあります[5]。

奥が痛い(深く挿入したときの痛み・性交後の痛み)

1. 子宮内膜症子宮内膜に似た組織が子宮の外(卵巣、子宮の後ろ側など)で増える病気です。日本産科婦人科学会は、月経痛、月経時以外の下腹部痛や腰痛に加え、排便時や性交時の痛み を主な症状に挙げています。20〜30代で症状が出やすく、年々強くなる傾向があるとされています[7]。月経痛が年々ひどくなっている人で、奥に響く性交痛がある場合は、一度婦人科で相談する価値があります。

2. 骨盤内の炎症(骨盤内炎症性疾患:PID)クラミジアや淋菌などの性感染症が子宮・卵管・卵巣まで広がった状態です。下腹部痛、においの強いおりもの、不正出血、発熱、性交時や排尿時の痛みが出ることがあります[8]。放置すると不妊の原因にもなるため、早めの受診が必要です。

3. その他子宮筋腫、子宮腺筋症、卵巣のう腫、膀胱炎、過敏性腸症候群、骨盤底筋の過緊張なども奥の痛みの原因になります[3][5]。

更年期の性交痛(GSM)

閉経前後にエストロゲンが減ると、腟や外陰部の粘膜が薄く乾燥しやすくなります。これに伴う腟の乾燥・ヒリヒリ感・性交痛・頻尿や排尿時の違和感などをまとめて GSM(Genitourinary Syndrome of Menopause、閉経関連泌尿生殖器症候群) と呼びます。北米閉経学会(NAMS、現The Menopause Society)の2020年声明では、閉経後女性の 27〜84% にみられる一方、見過ごされ治療されていないことが多いと指摘されています[9]。

「年齢のせいだから仕方ない」と思われがちですが、GSMは治療の選択肢がある状態です。

心理的な要因

不安、ストレス、疲労、パートナーとの関係の悩み、体へのコンプレックス、「また痛いのでは」という予期不安は、興奮や潤いを妨げ、骨盤底筋をこわばらせます[5]。過去のつらい経験が関わることもありますが、性交痛のある人の多くはそうした経験がないとも説明されています[5]。心と体はつながっており、どちらか一方だけの問題と決めつける必要はありません。


痛み方をチェック

当てはまるものを選ぶと、目安が表示されます。

診断ではありません。気になる症状があるときは医療機関で相談してください。「痛む場所で原因を考える」を読む

和室の窓辺で朝の景色を眺める女性
Photo: Seiya Maeda / Unsplash

自分でできること

以下は医療情報サイトや研究で紹介されている方法です。効果には個人差があり、あくまで一つの選択肢 です。痛みが続く・強い場合は受診を優先してください。

1. 潤滑剤を使う

MSDマニュアルでは、水性またはシリコン製 の潤滑剤が勧められています。油性のもの(ワセリン、オイルなど)はラテックス製コンドームを劣化させるおそれがあるため避けたほうがよいとされています[4]。香料などの添加物でしみる人は、無香料のものを選ぶと安心です[3]。閉経後の乾燥には、性交時に使う潤滑剤に加えて、日常的に使う 腟用保湿剤(モイスチャライザー) が第一の選択肢として挙げられています[9]。

2. 時間をかける(前戯を長くする)

興奮が高まると腟の潤いが増え、腟の奥が広がります。挿入までの時間を長くとること、挿入を伴わない触れ合いを取り入れることも、対処法として紹介されています[4]。

3. 体位を工夫する

奥が痛む場合は、深く入りにくい体位や、痛みのある側が自分で深さや速さを調整できる体位 を選ぶと負担が減ることがあります[4]。

4. 骨盤底のリラクゼーション(力を抜く練習)

性交痛では「骨盤底筋を鍛える」よりも、まず 緊張をゆるめる ことが大切な場合があります。腹式呼吸で息を吐きながら、肛門と腟の周りの力をふっと抜く感覚を練習するのも一つの方法です。

医療機関で行う 骨盤底の理学療法(筋の緊張をゆるめる手技、バイオフィードバック、電気刺激、段階的な拡張器の使用など)について、研究では次のように報告されています。

  • カナダの多施設ランダム化比較試験(誘発性腟前庭痛の女性212人)では、10週間の理学療法を受けたグループは、リドカイン軟膏のグループよりも性交時の痛みが大きく軽くなり、6か月後も差が続いたと報告されています[10]。
  • 19研究をまとめたシステマティックレビュー(2023年)では、電気療法(骨盤底筋トレーニングとの併用を含む)で痛みが軽くなったとする中程度の確実性の根拠がある一方、性機能や生活の質への効果は確実性が低く、さらなる研究が必要とされています[11]。

つまり、「効果が期待できるという報告はあるが、研究の数はまだ限られている」 というのが現時点での評価です。日本では骨盤底の理学療法を行う施設は限られているため、関心がある場合は婦人科で相談してみてください。

5. 痛いときは無理に続けない

痛みを我慢して続けると、「痛い→怖い→こわばる→もっと痛い」という悪循環が強まりやすくなります[4]。痛みを感じたら中断してよい、と事前に決めておくことも大切です。


パートナーとの話し方

性交痛は「自分さえ我慢すれば」と一人で抱え込みがちですが、パートナーと共有することで負担が軽くなることがあります。

  • 性行為の最中ではなく、落ち着いた時間に話す(「最近、入れるときに痛むことがある」など事実を伝える)
  • 「あなたのせいではない」と添える(責める意図がないことが伝わると、相手も協力しやすくなります)
  • 具体的に頼む(「もう少し時間をかけてほしい」「潤滑剤を使いたい」「痛いと言ったら止めてほしい」)
  • 挿入だけが目的ではないと確認する(触れ合い全体を大切にする合意があると、不安が和らぎます)
  • 必要なら 一緒に受診する ことも選択肢です

前述の英国の研究でも、パートナーとの性的関心のずれが性交痛と関連していたと報告されています[1]。二人の問題として向き合う姿勢が助けになります。


何科に、どんなときに行く?

受診先は 婦人科(産婦人科) です。更年期の症状が中心なら更年期外来、女性外来がある医療機関も相談先になります。

すぐに婦人科を受診したほうがよい症状

  • 性交後や月経以外の出血(不正出血) がある
  • 発熱 を伴う下腹部痛がある、においの強いおりものが出る[8]
  • 強い痛み、動けないほどの下腹部痛、吐き気を伴う痛み[8]
  • 妊娠の可能性があり、下腹部痛がある

早めに相談したい症状

  • 痛みが何度も続く、だんだん強くなっている[5]
  • 月経痛が年々ひどくなっている、奥に響く痛みがある(子宮内膜症の可能性)[7]
  • かゆみ・ヒリヒリ感・白いおりものが続く、市販薬を使っても再発を繰り返す[6]
  • 閉経前後から乾燥や痛みが続いている[9]
  • 痛みが怖くて性行為を避けるようになり、つらいと感じている

診察で聞かれること

いつから痛むか、入口か奥か、性交中か性交後か、月経との関係、おりもの・出血・排尿時の症状などが確認されます。内診に不安がある場合は、事前に「痛みが強くて内診が不安です」と伝えておくと、配慮してもらいやすくなります。


やわらかな日差しの窓辺で物思いにふける女性
Photo: Beaver Fernandez / Unsplash

選択肢の比較

選択肢向いている人内容費用の目安注意点
セルフケア痛みが軽い、乾燥や緊張が主な原因と思われる時間をかける、体位の工夫、力を抜く練習、パートナーとの話し合い0円原因の病気は見つけられない。続く場合は受診を
市販の潤滑剤潤い不足による入口の痛み水性・シリコン製の潤滑ゼリーを性交時に使用1,000〜3,000円程度油性はコンドームを劣化させるおそれ。しみる場合は使用を中止し相談を
婦人科出血・発熱・強い痛み、痛みが続く、奥が痛む、更年期の乾燥診察・検査(内診、超音波、おりものの検査など)、原因に応じた治療(抗真菌薬、抗菌薬、ホルモン療法、鎮痛薬、理学療法の紹介など)保険診療で数千円程度〜(検査内容による)原因を確認できる唯一の選択肢。不安な点は事前に伝えてよい

※市販品は症状を和らげる補助であり、病気を治療するものではありません。


よくある質問

Q1. 初めての性行為で痛いのは普通ですか?

初めてのときは緊張や潤い不足から痛みを感じる人が多くいます。ただし、毎回強い痛みがある、指やタンポンも入れられないほど痛む場合は、腟けいれん(腟痙)や処女膜の形の問題などが隠れていることもあるため、婦人科で相談してください[4]。

Q2. 性交後に下腹部が痛むのはなぜですか?

深い挿入による一時的な痛みのほか、子宮内膜症、骨盤内の炎症(PID)、卵巣のう腫、膀胱炎などが原因のことがあります[3][7][8]。発熱や出血を伴う場合、痛みが繰り返す場合は早めに受診してください。

Q3. 更年期の性交痛は治療できますか?

GSM(閉経関連泌尿生殖器症候群)には、潤滑剤・腟用保湿剤のほか、医師の処方による腟の局所エストロゲン療法などの選択肢があると報告されています[9]。体質や持病によって使える治療が異なるため、婦人科や更年期外来で相談してください。

Q4. 潤滑剤は体に悪くないですか?

用途に合ったものを正しく使えば、一般的な対処法として医療情報でも紹介されています[4]。水性またはシリコン製を選び、かゆみやしみる感じが出たら使用をやめて相談しましょう。

Q5. 痛いことをパートナーに言いづらいです。

多くの人が同じように悩んでいます。落ち着いたタイミングで「あなたのせいではない」と添えて伝え、具体的にしてほしいことを話すと共有しやすくなります。一人で抱えきれない場合は、婦人科で相談することも選択肢の一つです。


※この記事は一般的な医療情報の提供を目的としており、診断や治療に代わるものではありません。症状がある場合は医療機関にご相談ください。

参考文献

参考にした論文・資料(11件)
  1. Mitchell KR, et al. Painful sex (dyspareunia) in women: prevalence and associated factors in a British population probability survey. BJOG. 2017;124(11):1689-1697. https://researchonline.lshtm.ac.uk/3402785
  2. Contemporary OB/GYN. British study sheds light on postmenopausal dyspareunia. https://www.contemporaryobgyn.net/view/british-study-sheds-light-postmenopausal-dyspareunia
  3. MSDマニュアル プロフェッショナル版「性器-骨盤痛・挿入障害」 https://www.msdmanuals.com/ja-jp/professional/18-婦人科および産科/女性の性機能および性機能障害/性器-骨盤痛-挿入障害
  4. MSDマニュアル家庭版「性器-骨盤痛・挿入障害」 https://www.msdmanuals.com/ja-jp/ホーム/22-女性の健康上の問題/女性の性機能障害/誘発性腟前庭痛-(腟前庭炎)
  5. Mayo Clinic. Painful intercourse (dyspareunia) - Symptoms and causes. https://www.mayoclinic.org/diseases-conditions/painful-intercourse/symptoms-causes/syc-20375967
  6. MSDマニュアル プロフェッショナル版「カンジダ腟炎」 https://www.msdmanuals.com/ja-jp/professional/18-婦人科および産科/腟炎-子宮頸管炎-および骨盤内炎症性疾患/カンジダ腟炎
  7. 日本産科婦人科学会「子宮内膜症」 https://www.jsog.or.jp/citizen/5712/
  8. MSDマニュアル家庭版「骨盤内炎症性疾患(PID)」 https://www.msdmanuals.com/ja-jp/home/22-女性の健康上の問題/腟炎-子宮頸管炎-および骨盤内炎症性疾患/骨盤内炎症性疾患-pid
  9. The North American Menopause Society. NAMS releases the 2020 Genitourinary Syndrome of Menopause Position Statement (EurekAlert!, 2020). https://www.eurekalert.org/news-releases/498670
  10. Morin M, et al. Multimodal physical therapy versus topical lidocaine for provoked vestibulodynia: a multicenter, randomized trial. Am J Obstet Gynecol. 2021;224(2):189.e1-189.e12.(PEDro収載) https://search.pedro.org.au/search-results/record-detail/62130
  11. Fernández-Pérez P, et al. Effectiveness of physical therapy interventions in women with dyspareunia: a systematic review and meta-analysis. BMC Womens Health. 2023;23:387.(PEDro解説) https://pedro.org.au/english/systematic-review-found-that-physiotherapy-techniques-improve-pain-sexual-function-and-quality-of-life-of-women-with-pain-during-or-after-sexual-intercourse-dyspareunia/

内容の最終確認:2026.10.19。誤りに気づいたらお問い合わせからお知らせください。